真夜中の虹

真夜中の虹(page 161/280)[真夜中の虹]

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161古屋出身ということで、地元の話で盛りあがったりしたが、それでも舞台を見にきてもらえるほど親しくはなかった。なのに、花まで持って楽屋に顔を出してくれた。しかもいつもはピッタ....

161古屋出身ということで、地元の話で盛りあがったりしたが、それでも舞台を見にきてもらえるほど親しくはなかった。なのに、花まで持って楽屋に顔を出してくれた。しかもいつもはピッタリと側に付いているマネージャーの姿もなく、たったひとりで…。天下のアイドル様が、チンピラ役者に会いにきてくれた驚きと緊張で、たいした話もできないまま彼女は帰っていった。それから数日後、サンミュージックの屋上から彼女は飛び降りた。あの日、楽屋に来た彼女は何か話があったのではないか、それともただ単に芝居に興味があっただけなのか…、いまとなってはわからない。それでも、その日、僕にほんの少しの余裕があれば、娘の痣の話をしていたと思う。そして、きっとこう言った。世の中には欠点だからこそ美しいと思えることもあるのだと。そんな話が彼女とできていれば、彼女の運命も変わっていたかもしれない…。いまとなっては残念でならないが、人の運命だけは誰にも変えることはできない。彼女は彼女の人生を生きた。ただ、それだけだ。