真夜中の虹

真夜中の虹(page 159/280)[真夜中の虹]

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159える。僕の芝居さえうまく行けば、芝居としては完璧に近い出来なのに、僕だけが足を引っ張っている。足さえ引っ張らなければそれでいい、お願いだから普通にやってほしいと、共演者もスタッフも皆、思っていたに....

159える。僕の芝居さえうまく行けば、芝居としては完璧に近い出来なのに、僕だけが足を引っ張っている。足さえ引っ張らなければそれでいい、お願いだから普通にやってほしいと、共演者もスタッフも皆、思っていたに違いない。でも、どうすることもできない。僕は僕なりに努力はしているのだ。動かないのは舌なんだ。文句は舌に言ってくれ!しかし、そんな言い訳はプロでは通用しない。僕はどうすることもできず、次第に卑屈になっていき、共演者とはほとんど口を利かなくなっていた。そんなとき、先輩の俳優さんから嫌みを言われた。「ちゃんと喋れ!」そんなこと百も承知だ、でもできないんだよ…、もう死にたいなぁ……、そう思いながら帝国ホテルの脇道を、下を向いて歩いていたら…。ドーン!!何かにぶつかり、目の前が真っ暗になった。それは帝国ホテルの喫茶店のガラス扉だった。どうやら自分からそこに突っ込んでしまったみたいだ。頭から血が滴り、目の中に入ってくる。早く病院に行かないと…。しかし、その日は日曜だった。休日でも診療してくれるところをやっとのことで探し、眉の下を三針縫った。芝居が下手くそな上に怪我をしてしまうなんて……。ますます共演者からは距離を置かれ、僕は完全に孤立