真夜中の虹(page 151/280)[真夜中の虹]
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151第二九話「未熟」映画「Ronin」の撮影が終わった頃に時計の針を戻す。一九八五年。僕は二十五歳になっていた。いくつかのドラマや映画の端役を演じ、ゆっくりと役者としての経験を積....
151第二九話「未熟」映画「Ronin」の撮影が終わった頃に時計の針を戻す。一九八五年。僕は二十五歳になっていた。いくつかのドラマや映画の端役を演じ、ゆっくりと役者としての経験を積み重ねていた。しかし、まだまだ演技と呼ぶにはほど遠く、役者稼業は手さぐりの状態だった。「明日、フジテレビに行ってください。新番組に中島さんのことを欲しいと、萩本欽一さんが呼んでいます」ある日、事務所から電話があった。ああ、大将(萩本さんのことを業界内ではなぜか「大将」と呼ぶ)は僕のことを覚えていてくれたんだ。ありがたいことだ。大将から必要とされたことが嬉しくて、フジテレビへ飛んでいった。その新番組は「マイルド欽ドン!」といって、高視聴率番組「欽ドン!」のリニューアル番組だった。大将は焦っていた。衰えていく気力と体力、ゆっくりと落ちていく人気と視聴率。これが最後の挑戦、とでもいうような必死の覚悟がうかがえた。僕が呼ばれたのも、それまで決まっていた出演者のひとりを降ろしてまでのことだった。