真夜中の虹

真夜中の虹(page 15/280)[真夜中の虹]

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15三日間、毎日母と教会に通った僕の身体は、奇跡的に回復に向かった。皮膚が徐々に蘇ってきたのだ。医者から「死ぬ」と言われた子供が死ななかった。母は神様に感謝したという。それから四十年が経った。身体の端っ....

15三日間、毎日母と教会に通った僕の身体は、奇跡的に回復に向かった。皮膚が徐々に蘇ってきたのだ。医者から「死ぬ」と言われた子供が死ななかった。母は神様に感謝したという。それから四十年が経った。身体の端っこにそのときにできた火傷の痕あとが残っている。右手の小指と薬指と中指にある小さなヒキツリ。冬の寒い日はよくこのヒキツリが痛くなる。ひび割れもしやすく、その割れた間に泥が入るとなかなか取れてくれない。それでもこの指のヒキツリで苦労したことといえば、タテ笛の穴が押さえきれなかったことと、好きな女の子の手が上手に握れなかったこと、あと、パソコンのキーが押し辛いことぐらい。「辛いことがあったらヒキツリを見なさい、一度死んだ命と思えば、何でも大丈夫と思えるから」母はよく言っていた。それでもヒキツリに助けられたことなんか一度もなかった。だけど、小事にはビビッても、大事にはあまり動揺しない性格にはなった。あの日、医者から「死ぬ」と言われた赤ん坊が四十年の時を経て、いまだにこうして生きている。C型肝炎になりながらもなんとか楽しく生きている。いまでも風呂に入るとき、手のひらをたまに見ることがある。そこにはヒキツリという小さ