真夜中の虹

真夜中の虹(page 148/280)[真夜中の虹]

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概要:
148僕は一から役者をやり直すことにした。やり直すと言っても、相変わらず不器用で下手くそには違いなかったが、それでも自分の内側では大きな変化があった。これからは、河合監督から言われたことを忘....

148僕は一から役者をやり直すことにした。やり直すと言っても、相変わらず不器用で下手くそには違いなかったが、それでも自分の内側では大きな変化があった。これからは、河合監督から言われたことを忘れることなく、自分なりの哲学を持ち、ひとりでこの世界に立ち向かっていこうと決めていた。それからというもの、どんな役に対しても全力でぶつかり、悩み、そこから多くのことを学ぶことができるようになった。さまざまな作品に出演し、いろんな役に挑戦する日々は苦しくも楽しい時間だった。河合監督の呪縛から解き放たれつつあったある日、そのころ付き合っていた彼女が、「以前わたしを可愛がってくれていた、知り合いのスタイリストのSさんが首を吊ったらしいの……」と言った。Sさんというのは、河合監督の舞台「ACB?アシベ恋の片道切符」のスタイリストに決まっていたが、ちょっと行動に問題があり、途中で仕事を降ろされた人だった。彼女は続ける。「Sさんて、河合さんのことが好きだったのよね……」僕は事務所の舞台のプロデューサーだったうちの社長に電話をした。「Sさんが自殺したの知ってます?」