真夜中の虹(page 137/280)[真夜中の虹]
このページは、電子ブック 「真夜中の虹」 内の 137ページ の概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると、今すぐ対象ページへ移動します。
概要:
137上がってくるのを感じた。逃げたいという気持ちは消え、気がつくと監督の熱意で胸が一杯になっていた。夕方になった。それは、照明部が手直....
137上がってくるのを感じた。逃げたいという気持ちは消え、気がつくと監督の熱意で胸が一杯になっていた。夕方になった。それは、照明部が手直しをしているほんの短い間だった。ふと目線を移した先に、真っ赤に染まった夕焼けがあった。監督、スタッフ、これまでの人生に関わったあらゆる人々、それぞれの愛情、醜さ、優しさ、悪さ、弱さ、強さ、いろいろな思いがごっちゃになって夕日の赤に溶け、心の中に広がっていく。人間のわがまま、人間であるわがまま、己のわがまま、己であるわがまま、すべての生き物は皆わがままだ。突然、心が何かを感じ、そのままの気持ちを演技に乗せてみた。「刀は武士の魂じゃ」何百回と吐いた台詞を初めて素直に言うことができた。泣き出しそうな気持ちを必死に押さえ、坂を駆け下りた。