真夜中の虹

真夜中の虹(page 136/280)[真夜中の虹]

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136第二六話「信者」午後になった。日差しが一段と強くなり、情け容赦なく照りつける。そして撮影も容赦なく再開。「じゃあ行こうか」監督の声が現場に響く。映画監督という人種はどんなとき....

136第二六話「信者」午後になった。日差しが一段と強くなり、情け容赦なく照りつける。そして撮影も容赦なく再開。「じゃあ行こうか」監督の声が現場に響く。映画監督という人種はどんなときでも元気だ。こちらが、早く死んでくれないかと思えば思うほど元気になっていく。まるで化け物だ。そして僕はその化け物に飲み込まれてしまった獲物、もう手も足も出ない。出てくるのは相変わらず涙ばかり。何度も繰り返し演技をしているうちに、神経がプツプツと音を立てて切れ、意識が薄れていく…。しかし、監督は「もう一回」、「愛がない」をただ繰り返すだけ。近くで囲むようにして見ていたスタッフも、あまりのシゴキに恐れをなし、どんどん遠巻きになっていった。今日はもうOKは出ないだろうと、僕はすでに諦めかけていたが、ひとりだけ諦めない男がいた。それは監督だった。今日はもうやめようか、とは絶対言わず、鸚鵡のように繰り返し「もう一回」としか言わない。そのしつこさに、いつしかこちらの心も動かされ、熱い塊のようなものが心の底から沸き