真夜中の虹

真夜中の虹(page 13/280)[真夜中の虹]

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13そんな心持ちで日々やってくる「不運」という奴に向き合っていると、「不運」の「不」の字が外れて「運」という奴がふと舞い降りてくることもある。そんなときは、少しだけいい気持ちになって欠伸をしよう。のんび....

13そんな心持ちで日々やってくる「不運」という奴に向き合っていると、「不運」の「不」の字が外れて「運」という奴がふと舞い降りてくることもある。そんなときは、少しだけいい気持ちになって欠伸をしよう。のんびりした欠伸ほどいいものはない。僕はひとつの欠伸のために、日々悪戦苦闘していると言っても過言ではない。さて、そろそろ本題に入ろう。僕が産まれたのは、一九六〇年六月二十三日の深夜。そのとき、灰色の背の高い外人の魔女が僕を見にきたらしい。らしい、と書いたのは母がそう言ったからで、こっちはそんな魔女なんか見た覚えはない。うちの母はちょっと変わっていた。弁当箱に白飯と魚肉ソーセージを一本だけ入れ、平気で子供に持たせる母親なのだ。これから話すことはすべてそんな母から聞いた話なので、どこまで本当かはわからない。僕が最初に見舞われた不運は、一歳の頃だった。やっとよちよち歩きを始めた赤ん坊の僕は、石油ストーブの周りで遊んでいた。傍らには父がいたのだが、子供がストーブに近付いていくのに、まったく気が付いていなかった。ストーブには沸騰したヤカンがかかっている。そこに足下もおぼつかない子供が勢いよく倒れ込み、ヤカンがひっくり返った。耳をつんざくような泣き声。駆けつけた母親が慌てて衣類