真夜中の虹(page 101/280)[真夜中の虹]
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101ほかにも祖父との共通点はいくつかある。時々キレて手がつけられなくなるが、女性にはいたって優しく、基本的に明るい性格だが、心のどこかに黒い底なしの穴が空いている。おまけに肝臓が弱い(祖父は肝臓ガンで、....
101ほかにも祖父との共通点はいくつかある。時々キレて手がつけられなくなるが、女性にはいたって優しく、基本的に明るい性格だが、心のどこかに黒い底なしの穴が空いている。おまけに肝臓が弱い(祖父は肝臓ガンで、僕のC型肝炎は母を通じて祖父からもらったかもしれないと言われている)等々、容姿はまったく似ていないが、心の在り方なんか結構似ていると思う。ここで少し母方の系譜を辿ってみる。これからする話は母から聞いた話。といっても実際母から聞いたのではなく、母が書いた文章が見つかり、そこに書かれていた話だ。うちの母には話を誇張する癖がある。なにしろ、帝銀事件の犯人は平沢ではなく、うちの親戚筋の人だと本気で言う人だ。だから話の信憑性については定かではない。両親が死んで数カ月経った頃、兄から「こんなものが出てきた」と、原稿用紙に書かれた母の文章を見せられた。そこには、こんなことが書かれてあった。母は、住井すゑが書いた小説『橋のない川』が大好きだった。ある日、その舞台となった土地へどうしても行ってみたくなり、父と一緒に車で出かけた。奈良県にある、小説のモデルになった場所で車を降りると、そこには一台のライトバンが停まっていて、見るとその車の腹に、母方の姓が書かれてあった。母方の名字は珍しく、昔は電話帳を開いても、東京には数件しかなかった。それがここでは、辺り一帯の家々に、母にとって懐かしい表札が掛けられている。思わず近くにあった事務所に駆け込み、その村の台帳を見